ブロガーならブログで語れ、と彼は言った。
「ブロガーならブログで語れ!」
彼は親が子の手を引くような口調でそう言った。
たしなめるような、それでいて少しやさしさのこもった声で。
場所はとあるカレー屋、とある飲み会での一コマ。鼻腔をくすぐるスパイスの香り、BGMのインド音楽が一瞬無音になった気がした。
私は今まさに目の前に座った女性からの質問に応えようとしたところ。
彼は私の横に静かに立っていた。
女性の質問はこうだった。
いや、それは質問というより独り言だったのかもしれない。
「私がいまここに持っているMacはUSキーボードなの、日本語入力と英数入力を切り替えるのがそれはそれは面倒で」
テーブルには半分ほど残ったカレーの器と、バラバラにちぎられ少し冷めてしまったナンと、女性のMacBook Pro 15インチ。
偶然、まったく偶然なことに、私は同じ内容で悩んだことがあり、カバンにはUSキーボードのMacBook Airが入っていた。
まさに取り出し、説明をしようとしたところで冒頭のセリフだった。
まさか今からブログを書けというのか…
と少し考えたところで、よくよく思い出してみると、自分自身が過去にそれを解決するアプリと設定を、ブログに書いていたことを思い出した。
すぐさまエントリのURLを送った、女性はとても感謝をしてくれた。
これはとても興味深い体験だった。
自分の過去のブログエントリが、現在の会話における台詞を先取りしていたと感じたがそうではない、ログとして残していたからこそ現在使用可能になったのだ。
もちろん、エントリを書いた時点でこんなことになるとは想像もしていなかったわけで。
そして、もしこの時、過去のエントリがなかったとしても、私が答え、その内容をさらにブログに書けば、それは女性に対してだけでなく、その他の読者や、いつか話すかもしれない誰かに届くのかもしれないと。
なので私は今またこうしてブログを書いている。
こんなことがあったんだよ、とまだ見ぬ誰かに語りかけるように。
あなたの右脳の恋人タムカイ(@切り抜きジャック)でした。